話がそれがちになる。郵便、地下鉄、スポーツ、田園都市などもイギリスの発明した文化だ。もちろん郵便と地下鉄は今や世界になくてならないものだし、サッカー、ラグビー、テニス、ゴルフなど、イギリスで生まれたスポーツは数限りない(もしなければ世界は寂しいものになってしまったろう)。ただ田園都市、これだけは日本にないものだ。二十一世紀になりようやく田舎暮らしのよさが見直されつつあるにしても、日本の自然文化とはちょっと違うような気がする。イギリスの田園は自然と一緒に暮らすことを謳っているものの、きちんとコントロールされている。日本の庭園には空(くう)があり、イギリスの庭園には美がある。そんな印象だ。これらはあとで具体的な場所に行ったときに、もう少し掘り下げてみたい。
ロンドン・ヒースロー空港に着く(二十年ぶりだ)。簡単な荷物検査だけあって、税関さえなく素通りできた。「え?」日本はEUなどと扱いが同じ優遇国の一つになったらしい。まるで東京から大阪に着いたかのようなスムーズさ(アメリカ入国のほうが大変だった)。さっそくサブウェイ(アメリカ英語)ではなく、アンダーグランド(地下鉄)に乗る。ロンドンではTUBEと呼ばれている。ロスのような騒々しさはなく、すんなりと電車に乗る(羽田空港のようだ)。外に出ると空は薄暗い雲に覆われている。レンガ作りの住宅が見え、木々が生えている。そして暗い顔のイギリス人たち。いや、それらは居心地の悪いものじゃなかった。基本日本人も陰気でシャイな人種、だからしっくりとくるのだろうか。
電車で三十、四十分くらいで目的のハマースミスという駅に着いた。わりと賑わっている。スーパーなどを探索しながら、駅前を歩く。レンガ作りの建物、パブなどが点在し、いい感じ。英語なのでさほど困ることもない。この点がイギリスのよい点だ。フランスやドイツなど他の諸外国ならもう少し困っていたかもしれない。とはいえ、宿を探すのは手探りである。「地球の歩き方」を持参し、地図を見ながら歩くという昔ながらのやり方。スマホやグーグルマップが使えたらもっとラクだったろう(持ってなかった)。
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