「パリスの審判」などギリシャ・ローマ神話をモチーフにするのは、ルネサンスの画家と一緒かもしれないが、「レイプ(略奪)」シーンを描いたりルーベンスは大胆だ。その大胆さが、興味深いと思った。レンブラントの絵などもいくつかあったが、むしろおとなしすぎると感じるくらいだ。今回はルーベンスに会いに来たのかもしれない、そう思わされた。もちろん他にも印象派の絵などを見てきた。ドガや、ゴッホの超有名な「ひまわり」も実物は初めて見た。またスーラの「アリエールの水浴」も実際に目の前にすると、意外と大きくて迫力がある。名画は心を揺さぶり、頭もフル回転である。
あっという間に時間がたった。美術館を真剣に見たら、かなりの集中力を使う。もちろん日本の美術館と違い、進路方向などもないから自由に回れるのだが。その分、広くて自分の意志で判断しないといけない。濃密な内的な時間が過ぎ、二時間くらいでナショナル・ギャラリーを出た。全然全ては見れていない(おそらく四分の一か、五分の一)。もう昼前だった。外では太陽の光が輝き、観光客もようやくトラフォルガー広場に集まってきている。ちょっと疲れながら、移動する合間に近くの教会でたまたまやっていた礼拝堂に入る。中でライヴをやっていたので聴く(これも無料である)。外とは違う空間。それに教会の空間が広くて大きく古くて、大聖堂って感じ。多くは中年以上の英国人(多くは夫婦)。静かな中、みんな歌に聴きいっている。
厚い信仰心を感じた。日本ではあまり感じないものだ。日本人はもっと雑然としてて庶民的(世俗的)で、ある意味宗教などなくても生きていける。しかし英国にはしっかりと宗教が根づいてて、それは生活や文化の中に根を下ろしている。日本のような宗教嫌いな国っていうのは逆に珍しいのかもしれない(だから自殺者は多いのだろうか)。もちろん日本にも神道や仏教はあるものの。一般的な人が信仰心を持っているかといえば、疑問である。イギリス人には少しそれを感じた。それは居心地の悪いものではない。敬虔で穏やかで、国や家族や人々に対する愛でもある。
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