あまりに広くて全部は歩ききれなかった。昼からはチェルシーに行く予定だったので、バス乗り場へと行く。そう、ロンドンのバスにようやく乗ったのだ。あの赤い二階建てのバスである。しかし考えてみると、この二階建てバスもイギリスの合理性のあらわれである。バスを二階建てにすれば、当たり前だがそれだけ乗客は多く乗れる。日本のように電線が多く、道が狭すぎる国では無理かもしれないが。景観も楽しめる。ハイドパークからチェルシーまではほんの十五分程度。充分に楽しめた。チェルシーに行くのには理由があった。敬愛する詩人、T・S・エリオットが住んでいたという場所なのだ。
T・S・エリオットについて知ってる方はそれほどいないかもしれない。自分だってそれほど詳しいわけじゃないが、十年くらい前に古本屋で買ったエリオットの詩集に衝撃を受けた。日本の詩人で言えば、と例えようとしても出てこない。エリオットのような詩を書く日本人はいない。日本人の詩はだいたい叙情的なものが大半で、残りは名言のようなものが好まれる。エリオットの詩はそういうものとは一線を画している。隠喩や宗教的な見地にあふれてて、一筋縄じゃ理解さえ困難だ。自分も完全に理解してるわけじゃないが、それでも格調の高さと旋律の素晴らしさに驚かされた。分かりやすく言うと、ノーベル文学賞を受けたイギリスの詩人(もとはアメリカ人でイギリスに帰化している)。
そんなエリオットが住んでいた場所が、チェルシーにあるらしい。しかもその区域にはオスカー・ワイルドも住んでいた所や、ほかの有名な作家などが住んでいたりもした区域。これは行っておきたい、ということで二階建てバスに乗り込んだ。チェルシーといえば、日本ではキャンディーか、サッカーチームの名前で有名である。しかしそのサッカーチームのチェルシー、拠点がロンドンということは知らなかった。サッカーファンには怒られそうだが。そんなチェルシーまでのバス移動は、とても楽しいものだった。
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