劇場自体がひとつの文化。建物もそうだし、観劇しにくる人々はドレスアップしてる。二階席の奥にはまるでクラヴみたいなバーもあって、お酒を飲める。劇団四季はおそらく子どもをターゲットにしてるだろうが、ロンドンではあくまで大人の文化だ。日本で子どもの文化が主流になったのはいつ頃なのだろう?戦後の経済復興で、大人は仕事が忙しくなったからだろうか。アニメや漫画は最初サブカルでしかなかった。よく「漫画なんて読んで。」と怒られたものだ。「本はいい」「漫画はわるい」という単純な二項立が成立していた時代。まさか日本で漫画やアニメを大人が楽しむ文化になるなんて思いもしなかった(だからそれを子どもの文化と呼ぶのはもはややためらわれる)。
にしても、大人だから楽しめる文化というのもある。日本なら能や歌舞伎・狂言といった古典、落語などもその部類に入るかもしれない。ロンドンならミュージカルはその範ちゅうだろう。もちろん「ライオンキング」だから子どももいたが。専用に用意された劇場は、中までライオンキングの世界である。正直、「キャッツ」ほどは感動しなかったが、それでもそのアートワークぶりには驚かされた。特に衣装や仮面劇のありようなど、立派に中世からの芝居を引き継いている。また、ライオンキングが「キング」の物語だという気づき。そう、イギリスは「王」の国であり、シェイクスピアが作ってきた「キング」の伝統が「ライオンキング」の中に生きづいている。
まさか「ライオンキング」とシェイクスピアがつながっているとは思いもしなかったので、驚かされた。しかし当然といえば当然なのだ(なぜ今まで気づかなかったか、劇団四季のせいではあるまい)。しかも「ライオンハート」と呼ばれたリチャード一世などもいるのだから、ライオンキングが歴史上のキングを想起させるというのはイギリス人にとっては当たり前のことなのかもしれない。やはり文化というのは、単独で生まれるわけでなく、受け継がれたものの中に発生する。ちなみに「流行」はその時代に合っているかで決まり、また文化としての「強度」は時代の変遷を経て試されるのだろう。
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