本当にウィリアム・モリスについては何も知らなくて、この旅がなかったら知ることもなかったろう。ウィリアム・モリスはデザイナーとして有名なのだが、そのテキスタイルというものが自分の趣味とも違うから。わりと地味めというか、日本でいう唐草文様というか。元々の自分が選ばないスタイル(例えば服装)であっても、実際にそのゆかりの場所を訪れたら影響を受ける(そういう服装になる)。それが旅の魅力の一つである。まさに、そういうことが起こった。これを書いている今も、ウィリアム・モリスのカードケースを愛用している(もう一つ買っておけばよかったくらいだ)。
ウィリアム・モリス邸は小さな建物で、日本でもそのように故人の住んでいた建物をそのまま記念館にしたような場所はいくつかあるだろう。しかし小さいながら、充実した内容だ。飾ってあるデザインを見ながら、解説文を読んでたっぷり時間を過ごした。いわく、ウィリアム・モリスはイギリスにとって大事なデザイナーであり、モダンスタイルという運動の中心人物といえた。十九世紀・ヴィクトリア女王時代の豪勢な文化とは逆の、質素なデザインを生活に持ち込んだのが彼である。包装紙や壁紙など、実践可能なデザイン。彼は生活の中に使うデザインとして、テキスタイル(草花模様)を推進したのだ。
それらは、庭園文化ともつながり、実際にウィリアム・モリス邸も庭園の中に建てられていた。あとで歩いてみたのだが、ハイドパークなどとは違うこじんまりとした中にも確かに息づく自然の姿。小川が流れ、木々が茂り、花が咲く(冬だから数は少ないものの)イギリス庭園の姿がそこにあった。それはヨーロッパ的な幾何学的な配置でもなく、むしろ自然と一体という意味では日本庭園に近いかもしれない。いやもっと非人工的で、庭園の中に小さな小川があり、鴨がいたりリスがいたりする(なんで日本の公園にはリスがいないんだろう、カラスばかりいるのに)。もちろん他の鳥もいるだろうし、春には草花が芽吹くだろう(冬なので見れなかった)。その庭園を歩きながら、いくつかのことを感じ考えた。
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